きものを知る

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第六回 きものの世界っておもしろい

株式会社桂商店 3代目 桂 公保氏

京都市中京区蛸薬師通室町東入 京のじゅばんや 株式会社桂商店 3代目。
問屋に5年、染屋に1年の修行を経て29歳のとき、自社を継承すべく桂商店の若大将となる。「じゅばん(裏ものと呼ばれる胴裏、肩裏、八掛)の専門店」としての確かなスタンスを家族一丸となって守り抜き、さらなる発展に若い力を注ぎ続けた10年間。現社長である父親譲りの手堅く清潔な商いのノウハウは、知らず知らず身に付いたという。きもの姿はさすがプロ。奇を衒わず男らしく商売人らしく、自然な振る舞いに魅力を感じる。来年で40歳。

オンリー・ワンであり続けたい

室町蛸薬師あたり、ここらは問屋街で知られる室町のちょうどおへそ(中心)だ。
その交差する見通しのよい一角に桂商店はある。染め抜きののれん、間口の広い店構えは、ある種閉鎖的な室町にあってとても明るい。外から伺っても「あ、お客さんがぎょうさん(たくさん)来たはる」とうれしい。「千客万来、商売繁盛」そんなムードが伝わってくるのだ。同社の発祥の地は大阪、52年前に京都の室町に根をおろした。

「ウチのこだわりはオリジナル性。でも、作り手側の押し付けであってはいけません。お客様の様々なニーズに合ったものを作り、それらを必ず置いているという『専門性』を大切にしたいのです。むかしは売れ筋商品というものがありましたが、今はないモノを要求される時代。コアなきものファンにも満足頂ける、じゅばんや裏ものを揃えております。」と桂さん。
聞けば、平成元年以前はじゅばん以外のきものなども扱っていたそうだ。「これからの時代は特化した商品のみの充実を図って行こう。そしてオンリー・ワン、ナンバー・ワンになれるよう努力しよう」と方向転換をした結果、全国呉服店や前売問屋からの引き合いが増え続けているという。
丹後にある自社専属の織場にて、本物の良質の生地だけを織り上げる。専門の染色職人の手によって丁寧に染め上げられた商品は、素人目に見ても逸品としての風格があり裏ものとは呼びがたい。

「業界の中にあって、じゅばんは価格だけはある一定のラインがありますが、わざわざお客様に『きものや小物に合わせてこのじゅばんを』という勧め方はいたしません。でもこれからの時代、こだわり心を持ってトータルにじゅばんや裏もの(胴裏、肩裏、八掛)まで選んで頂けるようになればいいですね。小紋や付け下げなどきものを買ってもらうことも大切ですが、裏ものでプラス数万円を出していただくことにより、相当イメージが変わってくることを知っていただきたい。仕立ての前の部分だからこそ、我々もお客様のご意向に完璧にお応えしたいと思います。」
店内、所狭しと並べられた様々な色合いや個性的な柄域の裏ものを見て思った。
「表」じゃないところにまで凝ってこそ本物のお洒落、こだわりの装いができる大人になりたい。

「外商もしないんですよ。その姿勢は変わりません。」その自信の裏側にあるのは確かな商品群と、先見を貫く信念。「家訓は、『大きくするな、石橋を叩いて堅実に渡れ』なんですよ」と笑う桂さん。傍らで楽しげに頷くのは社長であった。
やがて、今は幼い桂さんの息子さんもその家訓を唱える日があるのだろう。