神 伝統と共にあり 手おりのおはなし
日本の民族衣装は歴史も古く、単一民族のなかで発展してきました。文化複合体を形成する場合のみ伝承し使用されたものです。
現在のかたちになるまでには、何百年という歳月を越えて先人の知恵と工夫によって完成されました。特にお話したいことは民族衣装と信仰です。
素材、柄、色、かたち、製織方法すべて信仰が基礎になっております。

まず、素材は古代より絹が最高と思われてきました。事実、科学的に調べても絹に勝る繊維はありません。言いかえれば人間に一番優しい繊維と言えます。蚕は太陽の光を充分に浴びた桑の葉を食べて成長し繭をつくります。その繭のひとつひとつを人の手で紡ぎます。一本の絹には、自然のパワーと念(こころ)が入っています。

次に柄です。柄が継承してきた理由には、歴史的伝説に基づくもの、視覚的感情によって受け継がれたものそして宗教上の信仰によって守られたものがあります。特に吉祥文古典的文様にはそれぞれの意味深い事柄が多いようです。魔除け、厄除け、怨念、怨霊をはらう目的で身につけました。また、富貴、健康、祈願達成などにも使われました。婚礼支度などでは、新婦の実家の怨念や怨霊を嫁ぎ先に持ち込まないよう吉祥文を利用しました。女性には子孫繁栄の大切な義務があります。そのため、古代より魔物悪霊を怖がりました。古典模様にはそれを守る大き・ネ力があったと考えられます。松竹梅、流水、亀甲、毘沙門など何千、何万とあります。特に日本人は菊が好きです。

色にも神が宿ります。色によって祈願も違います。色によって位も違います。色のあわせ方によってもパワーがかわります。

かたちは線の交わり方が大切です。平行する線にはパワーがありません。きものには直角に交わる線が多数あります。これ以上のパワーのある衣装も類をみません。 製織は手で織るのが当然のことです。特に帯は手織でありたいものです。女性の丹田を守る大切なところだからです。一越、一越職人の魂が織物に力を与えます。力織機(自動織機)にはそのパワーはありません。

きものは日本人の御守護であり、年代を越えて当代より娘、孫と受け継がれるべきものであると確信しております。きものはファッションである前に民族衣装であり先人より受け継がれてきた大切な思いが込められていることを再認識して頂ければこれに勝る喜びはありません。

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